「やっと、この瞬間が来たんだな」と思わず涙が滲んだ。
『べらぼう』第23話は、蔦重が“忘八の子”として生きる重さを抱えながらも、日本橋進出という夢に向かって歩み出す姿が描かれました。
この記事では、覚醒の瞬間と、その裏で蠢く謎の人物の正体に迫りつつ、視聴者の心を震わせた場面の真意を深掘りしていきます。
この記事を読むとわかること
- 蔦重の“覚醒”が意味するものと演出の意図
- 第23話で登場した新キャラ・謎の男の正体
- 吉原出身者としての差別と、その越え方
覚醒の瞬間──“忘八の子”が江戸を動かす
第23話の最大の見どころは、蔦重が“江戸一の目利き”として自らの覚悟を口にする瞬間でした。
この回では彼の「選ばれる者」ではなく「選ぶ者」としての成長が、視覚的・心理的に丁寧に描かれていたのです。
その覚醒の瞬間、何が起きて、何が変わったのか。そこに込められた深い意味を紐解きます。
階段の演出が意味するもの
蔦重が「階段を上がって」演説する構図。
これは彼が“下”にいた存在から“上”を目指す物語の視覚的メタファー。
忘八でも一等の孝行息子でございます!というセリフは、自らの出自すら力に変える決意の象徴でした。
狂歌指南書の大ヒットと耕書堂の変化
『浜のきさご』の出版成功により、耕書堂は一躍注目の書肆に。
“江戸一の目利き”としての信頼を得たことで、駿河屋との立場は逆転。
蔦重の商才と審美眼が真に評価された瞬間でもありました。
要素 | 演出 | 意味 |
階段 | 登壇して演説 | 身分の壁を越える |
狂歌出版 | 売上成功 | 商才の覚醒 |
“孝行息子”発言 | 自虐と誇り | 差別への反抗 |
謎の男の正体──扇屋が連れてきた“奥の手”の真相
第23話で一気に空気が変わったのは、扇屋が連れてきた謎の男の登場。
彼は一体何者で、蔦重にどんな影響を与えるのか?
一見すると対立の火種に見えたその存在が、蔦重に新たな“試練”を与える鍵となります。
丸屋の娘・ていの意外な言葉と感情
ていが放った「蔦屋には売らせない」のセリフ。
商売の論理ではなく、感情から出た拒絶だったことに注目すべきです。
これは、物語が今後「金では動かせない心」の領域に突入することを示唆しています。
謎の男は何者か?家柄と血筋が鍵になる
この“男”が誰なのか、名前はまだ明かされていません。
しかし彼の所作や立ち位置から、「武家出身か、名家の縁者」である可能性が高い。
日本橋進出の正当性を支えるための“表の顔”としての布石だと考察できます。
誰袖(福原遥)の“抜け荷”提案と商売の暗部
蔦重が書物で“表”の江戸を攻めるなら、誰袖は“裏”の江戸を動かそうとしていました。
この対比が第23話のテーマに深みを与えています。
抜け荷の提案という行動に込められた彼女の覚悟と矛盾を、もう一歩深く掘り下げてみましょう。
抜け荷とは?──誰袖が示した商人の生き方
「琥珀を蝦夷地から直で仕入れる」──誰袖の提案は、合法的な商いの枠を逸脱するものでした。
抜け荷とは密貿易の一種であり、当時の江戸においては重罪とされていました。
それでも彼女が提案した背景には、「出自に縛られず勝つ」ための切実な意志がありました。
“裏”の江戸を知る者の選択
誰袖の提案は、蔦重とは真逆。
秩序を守るのではなく、抜け道をつくる発想に彼女の生き様がにじんでいました。
「女」として、「吉原出身者」として、正攻法では勝てない現実を、彼女は誰よりも知っていたのです。
人物 | 手段 | 目的 |
蔦重 | 出版と言葉 | 日本橋進出 |
誰袖 | 抜け荷と密貿易 | 同じく進出支援 |
吉原出身者の差別──和泉屋の葬儀に見えた壁
吉原出身であるという“業”が、どこまでも彼らの足を引っ張る。
第23話では和泉屋の葬儀のシーンが、江戸社会の差別構造を強く照らし出していました。
この場面は、蔦重の決意と物語の“芯”に繋がる重大な伏線です。
忘八者への仕打ち──「家族」ではなく「外の者」
和泉屋の葬儀において、蔦重たちは庭先で待たされました。
“中庭に通す”という行為は、「あなたたちは外の者」と明言するに等しい。
この一瞬が、蔦重の怒りと決意を生むトリガーでした。
“恩返し”としての日本橋進出の意味
彼が「日本橋に店を出す」と決めたのは、商いの夢以上に、仲間の“悔しさ”を代弁するためでした。
「和泉屋を、忘れさせたくない」その想いが彼の背を押したのです。
それは、言葉にならない誇りのかたちでした。
『べらぼう』第23話の感想と考察まとめ
「人生の階段を、自分の足で一段ずつ登る」。
蔦重の姿に、誰もが“自分の物語”を重ねられたのではないでしょうか。
第23話は、立場も出自も関係ない“人の価値”とは何かを問いかけてきます。
この記事のまとめ
- 蔦重が“階段”で覚醒し、日本橋を目指す
- 謎の男とていの登場が次の波を呼ぶ
- 誰袖が見せた“裏の江戸”の生き様
- 吉原出身者への差別が物語の芯を照らす
- “恩返し”としての商いに心を打たれる展開
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